額装とは時間のかかるもの

10月3日からやるグループ展(木版画)に出すヤツの額装のため時間が取られる。額は持っているモノを使うので良しなのですが、マットを用意せねばならず、ひと仕事じゃ。
額もそうだけど、マットも店によって用意されているモノが違うし、値段も切り口も違うし迷うところ。なにより店員さんが違うしね(私は店員さんの人柄や知識は、なによりも大切だと思います)
大半の木版画友達が利用していると思われる額屋さんは、私にはイマイチ不服です。満足、不満足の差っていうのは、その人その人の額やマットに対する考え方や捉え方の違い(ま、好き嫌いの問題ってこと)だと思います。
そして私が一番信頼しているお店は値段がとっても高くて、財力の乏しい私には「とっておき」の時しか利用できない高嶺の花なのです。今回も利用できなんだ。
その高嶺の花は我が家の近所(歩いて20分かかんないくらい)のところにあり、私は中学生の頃に利用していました。当時私は油絵をやっており、そこでカンバスを購入していたのじゃ。その店に通うことによってカンバスにも色んなものがあり、絵の具も筆も色んなものがあるんだなぁ・・・と学ばせてもらったのです。
高校〜25歳頃までは、その店とはお付き合いがなかったのですが(べつの画材屋を使用していたので。今も基本的には別の店を使用している)木版画をはじめるようになってから(額装の時に)再びお付き合いをするようになりました。で、いろんな画材屋を知ってわかったのですが、そのお店は(とくに油彩と日本画画材)非常に質の高いモノを揃えていて、お店の方の知識が半端じゃなくある。という事だったのです。その店の顔料(岩絵具。水干もあるかもしれん)はスゴイよ。あまりに壮観で、見ているだけで満足するのだよ。
私は中学生の時にそういう店や大人に接してもらったんだなぁ・・・ということを30歳近くになって気付いたのだ。奇遇というか、幸運だ。再びお付き合いがなければ、この幸運に気付くこともなかったかもしれん。
そこの店主さんは、中学の時もあれやこれや教えてくれたけど、今もあれやこれや教えてくれる人で(教えることとか、話すこととか、見ることが好きなんだろう)ご自分の意見も織り交ぜて「こうしたらもっと良くなるかも」とか「いや、こっちの方がいいと思うね」とか「あれは論外だ」とかビシバシ言ってくれるのだ。
3月に展覧会で出したヤツなどは、その人の見立てで額装してもらったのじゃ。
KIF_980
当初、私は「正方形のデッサン額でマットには16コの窓をあけて欲しい。」と、頼んだのだが「減らしてもいいなら窓を15コにして長方形、和額にした方がいい。」と、その理由も織り交ぜ反論されてしまった。額の大きさ、額とマットの色でももめた(オフホワイトにするか生成りにするか、卵にするかなど・・・微妙な違いなのだけど言い出すとキリがないのです)ほかにも「窓と窓の間隔をどれくらいあける」など・・私にはさっぱり想像がつかない事も言い出し・・・・店主さんがあ〜だ、こ〜だ、こっちの方がいいいかな。いや、こっちの方がいいか・・・と一人で決めてくれたのであります。
けっきょく額装の話だけで2時間近くかかったのだ。
出来上がってきたマットは「マットだけ飾っても絵になる」くらいの出来で、ため息がでましたよ、ほんと。店によって(早さと安さばかり求めて)「なんじゃこりゃ」と思うような切り口のところもあるんだけど、感嘆のため息がでるなんて初めての経験だったな。なんでも複雑なマット加工は職人さんに頼むんだそうだよ。
つくづく信頼できる店が(しかも近所に!)あってよかったと思います。高嶺の花よ、どうかいつまでも存在してくれ・・・。