長い長い帰郷

yakuto2006-08-05

自分の仕事についてブログには書くつもりはなかったのですが、懐かしい出来事がありました。依頼主にも承諾を得たので書くことにする。
ほそぼそと人形を作る仕事をしています。ほそぼそすぎて仕事と言えないかもしれません(でも、私の中では「自分の仕事」と思っているのです。)もともとはイラストでバリバリ稼げたらなぁ、生活できたらなぁ・・と思って頑張ったのですが、行き着いた先は人形。しかもバリバリではなくホソボソ。
どうして平面ではなく立体へ。イラストではなく人形へ移ったのか・・・自分自身では腑に落ちる理由があったりします。
私の作る人形は(当たり前の話なんでしょうけれど)すべて手作業、一点ものです。仕事の話がきて(依頼主とじっくり話をしてから)作りはじめるので出来上がるまでに時間がかかります。出来上がった人形は依頼主の所に行くので手元には残りません。正直言って値段はかなりします。自分では「人形」ではなく「立体」もしくは「立体人形」と呼んでいます。
間違っても手抜き、納得のいかないものを作りたくない。と、気位だけは一丁前。体力に自信がないことがホソボソに拍車をかけているのですが・・・とにかくホソボソ過ぎる上、宣伝もしないので存在を知る人も少なく、一年に数体作れば万万歳というのが現状。一体しか作んなかった年もあります。開店休業状態で、普段は粘土をこねくりますだけだったり、やっぱり作ってみたりのくり返し。
そんな生活をしています。身勝手な私と暮らしている同居人はつくづくエライ。
仕事第一作目がこの人形↓テキトーに撮った写真ですが、依頼主をモデルに作りました。依頼主は友達。
さくら
さくら posted from フォト蔵
私から依頼主へのおくりもののつもりで制作しました。依頼主から「作ってほしい」と言われなければ、私は(たぶん)一生、人形作りを職業にはしていなかったし、人に贈ることもしなかったと思います。自分を慰めるためだけに作っていたでしょう。
依頼主は人形に「さくら」と名付けて下さいました。
さくらは↓の裏表紙などに使われました(宣伝)

牛丼屋夜間アルバイト

牛丼屋夜間アルバイト

私の知らぬところで(いや、ホントは知ってたけど)さくらは、作者にくっついてテレビ出演を体験し、日帰り旅行(撮影)までしました。
そんなさくらが我が家に帰郷することになったのです(撮影中に落下して足が折れてしまったのじゃ)現地では少しだけ騒動だったようですが、電話を受けた私は内心ちょびっと喜びましたよ。・・・・手元を離れた人形が自分のところに(一時的にでも)戻ってくるんですからね。
その一時帰郷が依頼主と私の都合で長〜くなってしまい、今に至ります(かれこれ・・・4年・・・??)
それが先日『そーいえば、そろそろ、さくらを帰さなくてはなぁ・・』と、さくらを箱から出し姿を見て・・・あぁ、懐かしい・・・なんて感慨にふけったのです。
さくら
さくら posted from フォト蔵
技術的なことを言い出すとキリがないけれど・・・当時の私にしか作ることができなかったさくらが箱の中にいました。この子はいつまでも私の中では特別に特別を重ねた人形なのですが・・・・
「ふわぁ〜、はやく省子さんのところに帰りたいわぁ〜!!」と、眠りから目覚めたさくらに言われた気分。じつは・・・時に人形は話しだします。
とにもかくにも、あのころの懐かしい気分でいっぱいになり、いい人形を作ることができそう。作りたい気持ちになったのでありました。
・・・・・しかしながら私は今、趣味の木版画にズイズイズイズイと追いつめられている。土俵際いっぱいという状態。毎日二〜三時間みっちり木版画。・・・・・・しかしうまくゆかぬよ・・・。