おっかけ

yakuto2006-06-05

このブログに何度か書きましたが、同居人は伊藤若冲のおっかけです。ほかにも酒井抱一平櫛田中なども好きらしいですが、一番の本命は伊藤若冲。近畿圏の美術展などで(一枚でも)若冲が出るとわかれば、よほどの理由がないかぎりは観に行きます。近畿圏でなくてもモロモロの問題がゆるせば出かけとる。
この前も(たった一点を目指して)滋賀に行ってきました(ニューヨークパークコレクション展)同居人はお目当ての絵をみて「いま一歩なにかが足りない気がする」と言っておりましたが、いいたいことはなんとなくわかった。絵の外にも空間が広がってそうな感じがするのが、いま一歩なんだと思う。
私が伊藤若冲の良さをあげるなら、画面の中で完結している良さをあげます。それより外には広がらない、広がりようがない。ノビノビしていない。いかにも窮屈・・・というのが若冲の良さだと思っています。画面の中に世界を描ききっていて、その描き方が尋常ではないのが良い(ぜんぶ褒め言葉ですから)京都にはそういうの沢山ありますよね。庭やら建物やら祭りやら。都そのものがそうじゃないですか。京の都のど真ん中で生まれ育った人らしい絵だと思います・・・ですので若冲の絵を見て「絵の外にも空間を感じる。広がってゆきそーな気がする」なんてのは、なんだかひどく物足りなく感じてしまう。
サラッと描いた絵などは、興味のあるものに意識が集中しているのが良い。『これだけを描きたいがために他のものも描いてんだなぁ、他のものも味があるけど・・やっぱこれだけが描きたかったんだろうなぁ・・ははは』と思うような絵ばかりでいい。笑いを誘う(若冲の描くヒヨコは饅頭にしか見えん。一見の価値あり!)上の写真は若冲描く亀なのですが、実際に見ると甲羅に気合いが入ってます。カメ飼いから一言進言すると甲羅の枚数や位置がおかしいですけれどね。おかしいけれど、ここまで気合いを入れて甲羅を描いてくれる人はそうそういないであろう。
同居人に話を戻すと「いま一歩なにかが足りない」とか言いつつ、「洗ったらもっと凄いと思う?」などツブヤキながら何分も絵を眺め、その絵がプリントされているメモ帳なぞを購入して喜んでおった。おっかけの見本を見ているよーだ。おっかけとはかくも盲目的なのである。