ヒサキの本

本屋に行って、ザ〜ッと本とチェックして驚いたのですが・・・今年に入って4冊も新刊を出してるよ。松浦寿輝さんのことです。財布と相談したが一冊しか買えなんだ・・・徐々に買ってゆくしかあるまい。
一昨年もありえないくらい多く出版され、去年なぞは小説初の文庫化(2冊!)もありましたが・・・私の中では『なかなか出版しない(できない)人』であったので面食らっています。コツコツやってきた人なんだなぁ・・とあらたまった気持ちになりました。
松浦さんの本の中で一番好きなのは

ウサギの本 (絵物語・永遠の一瞬)

ウサギの本 (絵物語・永遠の一瞬)

私は勝手に「宮澤賢治へのオマージュ」と思っているのですが、松浦さんの持つ文体を損なわず「あぁ、こんな店主が、本が、本屋が、本当にあればいい」と思います。いつ読んでも、同じところで「いいなぁ・・」と感嘆し「こんなシーンもあったのか」と嬉しくなる内容なのです(読むたびに好きなシーンが増えてゆく)
しかし「ウサギの本」は松浦さんの著書の中では異色作。もともとは詩人としてスタートし評論や小説を書く方です。
私は・・・・ねりにねられた文章というのが好きです(達者な天才的な文章というのも、好きですけれど)推敲に推敲を重ねた文。努力のたまもの。それでいてサラッとした文体。そういう文章を読むと『もともとは器用な方ではないんだろうなぁ・・・』と、シミジミと感じ入る。今、パッと思いつく方は(賛否はあるでしょうが)芥川龍之介小林秀雄須賀敦子。他にもたくさんいらっしゃるけれど、サラッとした読みやすい文章ではなかったり(たとえば強固な城塞のような文章であったり、ゴツゴツとぶちあたる文章であったり・・それはそれで良いです、好きです)詩であったりします。詩はまた別物。
今、生きて書きつづけている方では松浦寿輝さんと梨木香歩さん(今回は松浦さんの事を書きます)松浦さんの評論などは「何を書いているのか私の頭脳ではさっぱりおてあげ!」なのですが、小説や絵本、エッセイ(「青天有月」が好きである←この本については武部利男さんにご登場願ってあらためて書きたい)を読むと、『不器用な方なんだろうな・・・すごいな、うまいな』と思ってしまいます。たった一文、一言にハッとする時があって、こういう言葉はどこから生れるんだろう。
好むものに『思い出すこと』と書く人、それが私の中の松浦寿輝。この一言が松浦さんのすべてを語っているような気がする。